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会長挨拶

会長挨拶

日本臨床宗教師会会長

鎌田東二

(上智大学大学院実践宗教学研究科特任教授 )

日本臨床宗教師会が発足して5年が経ち、島薗進会長が辞意を示さ れました。それにより、副会長4名の中から私が2代目の会長に推薦 されましたが、適任ではないと自分では思っております。島薗初代 会長の大らかにして温和で目配りと抑制の効いた采配により、日本 臨床宗教師会は最初期の5年間をほぼ順調に活動を展開できたと思い ます。島薗先生、これまでのご尽力、まことにありがとうございま した。そして、今後ともよろしくお願い申し上げます。2代目は3代 目の本格会長に引き継いでいくための、3代将軍徳川家光の前の秀忠 のような繋ぎ役だと心得ていますが、時期が時期だけにみなさまの ご協力を得て、このコロナ禍に苦しむ難局をくぐり抜け、次代に繋 いでいきたいと思います。 私は、神社本庁の発行する神職資格(正階)を持ってはいます が、自身は「神仏習合諸宗協働フリーランス神主」とか「神道ソン グライター」とか「石笛・横笛・法螺貝奏者」を自称して自由に活 動をしてきました。ので、本会会長を務めるような正統派の「宗教 家」ではありません。しかし、若い頃から自由に求道し表現しつつ 独自な「宗教活動」を展開してきたとは思っております。自費出版 も含めれば、詩集も3冊出しています(近作は『常世の時軸』『夢通 分娩』『狂天慟地』)。 私が考える「臨床宗教師」のモデルの一人は、遠藤周作の『深い 河』の大津青年で、やむにやまれぬ思いと熱情と志に衝き動かされ ながら、神の愛・キリストの愛を受肉し、苦悩の渦巻く現場に悩み ながら応答していく存在です。 そして、もう一人のモデルは、「臨床宗教師」という定義や枠に は収まりませんが、『苦海浄土』や新作能『沖の宮』を著わし、生 者と死者の声ならぬ声をこの世にしかと語り伝えた作家の石牟礼道 子さんです。大津と石牟礼さんはわたしにとって汲めども尽きぬ 「臨床宗教」のメッセージを発信してくれます。この声に耳を傾け ながら、日本臨床宗教師会の会員のみなさまの声を受け止めて参り たく思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。 

2021年6月

(『日本臨床宗教師会ニュースレター』第9号より)