since 2016

会長挨拶

日本臨床宗教師会は2016年に発足し、9年を経過しました。私は発足時に会長を務めましたが、5年が経過した2021年からは鎌田東二氏が会長を務めて下さいました。このほど鎌田会長が退任されるにあたり、再び私が会長を務めることになりました。

鎌田会長は2022年12月にステージ4のがんが見つかり、以後、闘病の厳しい時期も会長として力強く職務をお務め下さり、2025年3月、任期をまっとうされました。『スピリチュアルケア——臨床宗教師によるインターフェイス実践の試み』は任期を終えられる間際に刊行されたものです。

日本臨床宗教師会の名称は英語ではSociety for Interfaith Chaplaincy in Japanとなりますが、本書はその「Interfaith インターフェイス」の意義について本会の多くのメンバーが考察と討議を重ねてまとめられたものです。鎌田会長が積極的に行ってこられたこの取り組みの成果が刊行された意義は大きく、日本臨床宗教師会のあゆみにとっても大きな一歩となりました。

コロナ禍は過ぎたようですが、病院等での臨床宗教師のケア活動についてはなお制限が加えられがちです。他方、臨床宗教師の活動の場は病院や介護施設にとどまらず、被災地や地域社会のさまざまな領域に広がってきています。臨床宗教師の活動様態の多様化が進行しています。

一方、社会のさまざまな分野でも、スピリチュアルケアやグリーフケアの意義、また傾聴や寄り添いケアの意義が認められるようになってきています。それだけ期待されるものにもなって来ています。

新たな時代の求めるところ、また宗教や文化環境の違いを踏まえて、日本独自の形での臨床宗教的なケアが展開していくこととなります。これは新たなチャレンジであり、創造的な対応が求められています。

このようなチャレンジに応え、日本の臨床宗教師が人々により適切に認知され、社会に根づいていくことを目指して、任務を果たしていきたいと思います。

日本臨床宗教師会会長

島薗進

(東京大学名誉教授、大正大学客員教授、

龍谷大学客員教授、上智大学グリーフケア研究所客員所員)

 

 

(『日本臨床宗教師会ニュースレター』第17号より)