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会長挨拶

会長挨拶

日本臨床宗教師会会長

島薗 進

(上智大学大学院実践宗教学研究科委員長

・同グリーフケア研究所所長)

日本臨床宗教師会が発足しました。「臨床宗教師」が結集する団体です。臨床宗教師がどのような存在であるかをこの会が団体として示して いくことになります。この会の存在によって臨床宗教師として日本社会に対して顔が見える存在になるということです。

 きっかけは2011年3月11日の東日本大震災でした。多くの宗教者が被災地におもむき、人々の力になろうと模索を続けました。宗教者が特定宗教の教えを説いたり、儀礼を行ったりするのではなく、被災者ひとりひとりに寄り添い、力になろうとする支援活動が課題となりました。予期せぬ大災害でしたが、阪神淡路大震災以来、災害支援の活動は蓄積されてきており、それぞれに有益な支援活動に取り組みました。

支援活動の一つの柱であるスピリチュアルケアをこれまで以上に自覚的に、そして宗教宗派の枠を超えて進めていくための研修が始められました。東日本大震災の被災地に近い東北大学の実践宗教学寄附講座が臨床宗教師養成の拠点となりました。そこで研修を受け持続的に研修を積んでいこうとする宗教者たちが各自で結束して地域の臨床宗教師会が立ち上がり、全国の臨床宗教師会の形成へと歩みを進めました。

しかし、日本臨床宗教師会の構成員の活動の場はもちろん災害支援だけではありません。現代社会のさまざまな苦の現場で、医療やケアの場において、宗教者によるスピリチュアルケアの機会が広がっており、それぞれに研鑽し経験を積む例が増えていました。終末期医療や緩和医療と並行して、スピリチュアルケアが必要であること、事件・事故等による死者の遺族の方々へのグリーフケアも宗教者にふさわしい活動ができる領域です。

また、自死念慮者・自死遺族、引きこもりの人々、高齢者や貧困家庭やホームレスの人々、外国人や障害者などの孤立しがちな人々へのケアの活動に宗教者が取り組む例も増えてきています。これらも臨床宗教師の活動が求められている場です。このように見渡すと、現代社会のさまざまな苦の現場が、宗教宗派の枠を超えて取り組む宗教者の活動を促しているとも言えるでしょう。

日本社会に臨床宗教師の活動を定着させていくための課題はたくさんあります。この会とは独立 にスピリチュアルケアの活動に取り組んできた宗教者は少なくありません。それらの方々からも広く学びながら、協力の場を広げたいと思います。その道のりはなだらかなものではないと予想して います。山あり谷ありの長い道のりでしょうが、日本臨床宗教師会はその名にふさわしい活動を進めていくべく着実に歩んでいきたいと思います。このニュースレターがそのための情報交換の場として十二分に活用されることを願っています。

                   2017年1月

(『日本臨床宗教師会ニュースレター』第1号より)